030 鉄道マニアのマエストロ 秋山和慶②

なにわのヨッサン とっておきの【音楽交遊録】・・・・吉川智明(030)

サングラスをかけた一人の男が、大阪駅を朝7時47 分発の長浜行き“新快速”に乗って米原駅で降りた…9時12 分。そこから東海道本線に乗り換え大垣行きに…乗り換え時間はたった3 分。各駅停車だった。

9時53 分に大垣駅に到着。樽見鉄道は…“ありゃ?9時10 分発の次は10 時37 分や…朝メシ食べよ”(約40 分後)7番線に列車が滑り込んできた!眠気が覚めるようなピンク色の1両編成。発車した…住宅街を抜け…やがて車窓に名産の富有柿の畑が飛び込んできた。丁度色付き始めている。手には愛読書の西村京太郎の「ミステリー列車が消えた」。“そうそう…このあたりがこの本の舞台になったんや!… ホンマ、樽見線は何回来てもエエなあ”と男は呟いた。

1990年6月19 日…今はなき大阪新聞に「クラシック音楽の指揮者秋山和慶さんが、8月25 日、岐阜・大垣から樽見鉄道の終点・樽見までSL〝淡墨(うすずみ)号”の1日機関士を務める」って載っていました。“よっしゃ!密着取材や!”

我等が秋さん(マエストロ秋山)は正真正銘の“鉄ちゃん” =“鉄道マニア”。初めてマイクを向けたヨッサンは驚いた。バンクーバーの自宅を格安で買った(確か3000万)…それが1000坪でプール付き。暇があれば部屋の中に線路を敷きつめシュッポポを走らせ悦に入るんだとか。そして、これまた暇があれば汽車の雑誌や模型を買いあさる!大阪のオーケストラを振るのが楽しみなのか、旭屋書店7Fの“鉄道図書と模型売場”のコーナーに立ち寄るのが楽しみなのか…その表情からは判断できませんでした。

8月25 日(土)午前9時、水と城の大垣は抜けるような青空。マエストロが地元ブラスバンドやコーラス隊約300人を指揮しての“レール・コンサート” が始まり、SL号発車のプレリュードが駅前に響き渡ります。いよいよ発車式。マエストロの可愛い(もとい)…凛々しい機関士姿をご覧あれ‼

白煙と黒煙が青空に群がり… 消えていく…忘れていたシュッポポの旅情がジュワ~ っと蘇り、あまりの懐かしさと嬉しさで武者震い。汽笛が何度も何度も歌い、はしゃいでいます… きっとマエストロ(もとい)機関士の役目なんだろう。ffとp pの使い分けも上手いぞ!(と書いておこう)

久しぶりの牽引に汗を流しながら田園地帯を走り抜けるS L。倍率3倍でやっと乗車出来た人々、沿線に陣取り、シャッターチャンスを狙う大勢の“鉄ちゃん”、田畑の仕事を放り出して、カメラを手にしている農夫。SLから吐き出される煙が飛び込んでくる…が、“今日はええ匂いや!”皆が笑って、手を振り合っている…名演奏に酔いしれた聴衆のように。

旅情に身を沈めた約1時間半。(大垣を発って34 ・5キロ) 18 年ぶりに秋山機関士に操られた(?)SL・C 56 型淡墨号は、美濃路の旅を終え、樹齢150 0余年の淡墨桜で有名な樽見駅になだれ込みフィナーレを迎えました。

成る程、濃い緑が美しいから美濃なのか?それに川底の小石までもが透けて見える根尾川の清流は、日頃の雑念や勤続疲労を全身から洗い流してくれました。その夜、根尾村の淡墨公園で開かれた(今度は)マエストロ秋山と大阪フィルとの野外コンサート。谷間にこだまするクラシックからミュージカルナンバー、それにスクリーンテーマ。“星に願いを”が演奏された時、5千人以上の聴衆は、いつしか…星降る満天の空を見上げていました…来てよかった‼

*樽見鉄道…カラフルな1両列車に乗って美濃の名刹へぶらっと出掛けてみませんか?西国33 カ所の満願の寺=華厳寺は紅葉の寺でもあり、11 月中旬~下旬のシーズンは約40 万の人出です。(よしかわ・ともあき FM大阪くらこれ企画プロデューサー)

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機関士姿でご満悦の秋山和慶さん(1990年8月、岐阜県)

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