なにわのヨッサン とっておきの【音楽交遊録】・・・・吉川智明(070)
“音楽の国オーストリアを知る短いながら充実したコース。ドナウ河クルーズ、山と湖の美しいザルツカンマーグート、湖上オペレッタ、そしてザルツブルク音楽祭と、音楽と観光の楽しさが一杯”――こんなうたい文句に誘われて、清水どころか通天閣から飛び降りる気持ちで出かけたオーストリアの旅。
旅のしおりに“オペラ観賞には正装、フォーマルな服装をご用意下さい”とあった。“よっしゃ!帝王カラヤン様が指揮するオペラを大枚5万円はろて観にいくんやから、この際、タ…タキシードをこおて持参しよう”と阪急百貨店で奮発したら…何と17万円也!!嫁さんが目を剥いたけど、ある約束を…)そして目を疑ったのが“蚊取り線香と虫刺され用(ムヒ)をご用意下さい”とある…
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1988年8月某日…いよいよウィーン空港からウィーン国立歌劇場に直行。ツアーコンダクターに“オペラ観るんやから、タキシードに着替えなあかん。更衣室は歌劇場にあるんですか?”と聞いたら…“そのような所はございません”ときたもんだ。(今でも忘れられません)ヨッサンはバスの中で初めてのタキシードを汗を拭き吹き、ぎこちなく着替えたのでした…が、歌劇場に入って口があんぐり状態。イタリアやらフランスなどの観光客はリュックを背負いTシャツやポロシャツ、それに足はサンダル姿!!トホホ…何の為に着替えたんや。
で、演目はモーツァルトのオペラ「魔笛」。これまたトホホ…あんなに何回もCDで「魔笛」をお勉強。それも歌詞を覚えるくらい聴きこんだというのに、地元の聴衆はケラケラ笑っている…な、なにが可笑しいのかサッパリ分りません。実は、台本にないアドリブだらけであったのです。
8月某日…その日のタイムスケジュールは『午前…自由行動。午後…バスにてハイドンゆかりのアイゼンシュタット、コウノトリの町ルストを経てノイジードラー湖へ。夜…メルビッシュ湖上音楽祭』たった数行で1日が片付いてしまいそうだけど、この行間には、思わぬ出会いや発見、音楽の調べが息づいていました。
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みなさんにクイズです。オーストリアの左上の国は?(ドイツ)左側は?(スイス)左下は?(イタリア)右上は?(チェコとスロヴァキア)右下は?(スロベニア)では右側は?…そうハンガリー。我々はウィーンからバスで南南東に向かって行きました…緑豊かな森やワイン畑が続き…どこからともなく潮風の香りが!!なんでやねん内陸やで??!見えてきましたオーストリアとハンガリーの国境にまたがるヨーロッパ最大の塩湖・世界遺産の“ノイジードラー湖”なのです。
ノイジードラー湖の畔の町メルビッシュ。ここで毎年オペレッタ(喜歌劇)を上演し、オペレッタの音楽祭としては世界最高峰の1つ“メルビッシュ湖上音楽祭”が開かれるのです。
目の前に信じられない光景が…ご覧あれ!(つぎはぎ写真で堪忍!)湖の上がステージなのです。幅100メートルはありそうな超特大パノラマ・ワイド・スクリーンを観るような!!観客席は約6000。演目はワルツ王・ヨハン・シュトラウスのオペレッタ「ヴェニスの一夜」序曲が大自然に響きます…が、オーケストラは?左端の館の中(点々とした手元灯かり)です。オケの音や歌い手のマイクの声はどこから聴こえるのか…それは各館の上にある煙突がスピーカーなのです!!
さてさて、持参した蚊取り線香は?結局使用せず。もしかしたら6000人の大観衆を前に緊張(金鳥)して退散したのかも??!
ヨメサンとの約束…このツアー後、何回かの結婚式でこのタキシードを着用し司会料を頂くヨッサンの姿がありました。(よしかわ・ともあき FM大阪くらこれ企画プロデューサー)
メルビッシュ湖上で上演されたオペレッタ(1988年)