109 男が女、女が男…の色恋 上原まり&尾上辰之助②

我々がやれそうで出来ない、いや!どんなに精魂傾けても出来ない…昨今の政界を見てたら“地盤・看板・カバン”がなくてもなれそうやけど…梨園の世界(歌舞伎)はアカン。そんな男だけの世界に生きる男性に、女だけの世界=宝塚に生きる女性がインタビューしたとっておきのお話を。(前回の続き)

U:上原まり…“私はフランスの女王なのです~”マリー・アントワネット役(「ベルサイユの薔薇」)が今も頭にこびりつく。現在、母から継いだ筑前琵琶の第一人者として全国行脚のようこさん。(愛称)

O:尾上辰之助…父(二代目尾上松緑)にどつかれコヅかれ、ある時は縫いぐるみを着た辰之助少年を六尺棒で頭をポカポカ‼ひっぱたかれたことが忘れられない幼い日々。そんな親父が宝塚の生徒を教える姿を見て“あ~んな、やさしい(稽古は)ないですよ!歯が浮くような思いがした”と語った今は亡き辰之助さん。(1946~1987)

U「歌舞伎って言うのは男性ばっかりで、私たち宝塚とまるで逆なんですけど」、O「はい」

U「私の場合は女性が男性をやる人の相手役をやっているんです」、O「ええ、ええ」

U「辰之助さんの場合は、男性が女をやる人を相手に」、O「するわけですね」

U「どうなんですか?舞台の上ではどういう…」、O「面白いですよ!僕は宝塚なんかと全く同じだと思うんだけど、たとえばネ、女優さんとお芝居するでしょう?…するとドギマギするんですよ!!?つまり、こう、そこ、もう少し側へ寄ってとかさぁ、言われると“エエッ⁉”と思っちゃうわけネ」

U「アッハハ(笑い…というより高笑い‼)そんな感じに見えないですけど」

O「いやぁ、意外とそうなんですよ。ところがね、これが女形だと全然平気ですよ!抱きつこうと、何しようと」、U「そうですか??」

O「だから女優さんていうのはナマナマし過ぎるんじゃないですかねぇ。テレが入っちゃうんですよ⁉所が、相手が男で、普段一緒に酒飲んでいるようなのがね、女形やっててもね、スウッと入れて、何ら抵抗がないですねぇ」

U「じゃあネ、舞台の上で、男と女の芝居をしていますね」、O「ええ」

U「その時にやっぱり、女形の方を女だと思ってお芝居なさっているんですか⁉」、「そりゃあ。だって、アナタねぇ」

U「気持ち悪くって出来ませんよねぇ。(高笑い)」、O「そうですよ。5センチぐらい近づいてごらんなさい!向こうはね、髭(ヒゲ)が青々とあんだから(生えているんだから)。だけど、それはやっぱり女と思わないとさぁ。現実にね。ア~、今日は髭が何本生えてる、なんて思ったらやれないじゃないですか⁉」

U「私達も逆にそうですもの。この人(女だけど男役)、女だと思ったらラブシーンなんて出来ないワ」

男だけの世界、女だけの世界…今から30数年前のインタビューだけど、いまだ“色”あせないお話しです!!?

かつて、歌舞伎や松竹新喜劇でお客様を楽しませてくれた道頓堀中座。最後の歌舞伎に出演した7代目市川染五郎は、2年前のインタビューで「最初に中座に伺った時に、“スッポン(注)”から出るんですけど、その“スッポン”が手動なんです…中座の劇場は。で、“スッポン”に行くのにホントに身体を縮めて行かないと…奈落も天井が低いもんですから…使い勝手は悪いですが、趣のある、外も暑いですが、中も外と気温が変わらないという建物だった。その暑さを肌で感じながらやる芝居小屋でしたねェ」

注:スッポン…花道にあるセリ。下からせり上がってくる役者の頭が、まるで甲羅から首を突き出すスッポンのように見えるため、この名前がついたとか。(市川染五郎著「歌舞伎のチカラ」から)(よしかわ・ともあき FM大阪くらこれ企画プロデューサー)

109uehara

元タカラジェンヌで、現在、筑前琵琶奏者の上原まりさん

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