078 ロン=ティボーコンクール優勝秘話 清水和音③

なにわのヨッサン とっておきの【音楽交遊録】・・・・吉川智明(078

国際的なコンクールで優勝を飾った演奏家が、20年、30年もの長きに渡って第1線で活躍できる…?!そんな数少ない名演奏家の1人…ピアニスト清水和音。プロフィルを読んでいると“桐朋学園高校音楽科卒業後1980年にジュネーブに留学。1981年ロン=ティボー国際ピアノ部門で優勝”とある…この40数文字の文言の間に実はこんなおもろいゴールドメダル=エピソードが詰まっていたのです。

♬K:清水和音 Y:ヨッサン

K「(桐朋を)卒業して1年間ぶらぶら遊んでましてネ(Y「それは、マージャンしすぎ?!」)そうそう、マージャン屋で知り合った(Y「A子ちゃん?」)いやいや、テキヤの親分がいまして“お前はいくつだ?”って聞かれて、“18歳です”って、“なら、こんなとこ毎日遊んでないで、俺が旅館やってるから、そこの帳場で働け!!”って言われたけど…“これは、自分の人生は旅館の帳場ではないナア”って思って…それで、どこでもいいからヨーロッパに行こうかナアって思って。ピアノはたまには1週間に1回か10日に1回は弾いていましたから。」

Y「何でジュネーブ!?」

K「どこでもよかったんです。留学は行ってみないと分らないから」

Y「お金は?」

K「親が出すのは当たり前だと思ってました。ジュネーブは当時、スイスフランが高いので1フラン145円という時代ですから、どんなに(お金を)送ってもらっても貧乏なんですよ。で、この町にはおることが出来ないなっていうんで、(これが彼の凄いとこ)“どこかのコンクールで1等賞取ろう!〟と決めてコンクールに行ったんです。(Y「それがロン=ティボー?」)そうです!」

Y「で、ロン=ティボー行って優勝しはったん!?」

K「そうです。どこ受けに行っても、1位は拾いにいくようなもんだと思ってましたから」

♬Y「は~ァ???呆れてあんぐりや!!チャイコフスキーコンクールも行こう…とかは?」

K「たまたま、そう思った時に、すぐあるコンクールは…(Y「何年に1回やから」)来年あるのは何かと探したらロン=ティボーコンクールが春で、リーズコンクールが秋だった。で、春のロン=ティボーで、ま、これでいいやと思って」

Y「これを平気で、シャーシャーいうピアニスト…おもろいナア」

K「いや、そ~思ってますけどネ」

Y「ロン=ティボーで優勝したときに、普通やったら“やった~ァ”って感じになるでしょ?」

K「勿論、なりましたよ。当たり前って顔してましたけどネ!」

Y「賞金は、なんぼやったんです?」

K「当時、4万5千フラン。当時のレートで180万ぐらいでしょう。このコンクールがあった時、大統領が変わったんで、フランが大暴落したんです。だから賞金は大損したんですヨ(半減)」

♬Y「で、ロン=ティボー優勝したら、普通、天狗になるでしょう!?」

K「いや、その前から天狗ですから。全然変わらないです。(Y「インタビューでけへんがな」)それと同時に、冷静な所では、これがスタートだと分かってますし、これで、やっと仕事が出来る切符を手に入れた…ぐらいなモンは分かってました。肩書きが出来るのは、仕事が便利にするために、いいことだと思ってました」

1981年…丁度30年前…。

Y「日本のクラシック界に貴公子現る!!」

K「ま~ァ、男のピアニストがあまりいない時代でしたから」

Y「甘いマスク…モテモテやったでしょ?!」

K「今でもそうです」(大笑い)

このピアニストの口にチャックならぬ、蓋を閉めるのはなかなか難しい。

清水和音のニューアルバム「ムソルグスキー“展覧会の絵”」(オクタヴィア・レコードから10月26日発売)…観賞の秋にピッタリ!(よしかわ・ともあき FM大阪くらこれ企画プロデューサー)

078shimizu

ピアノの前で清水和音さん copy_Akira_KINOSHITA

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