なにわのヨッサン とっておきの【音楽交遊録】・・・・吉川智明(095)
天才指揮者マゼールさんに逢えるのダ!アメリカの名門ピッツバーグ交響楽団を率いて来日した1987年ときめきの春…。開放感溢れるリーガロイヤルホテルのラウンジ。着物姿のレディーがティーを運んできます。
インタビューが和気藹々のうちに進んでいき、ヨッサンの心の中は“ブラボー”の喝采に溢れました!!
♬
M:マゼール Y:ヨッサン
Y「日本にやって来て、必ずすることは?」
M「日本には古い友達がたくさんいて、彼等と会えるのが大変楽しいし、お寺や日本の古い建物を訪れたり、能や歌舞伎、相撲を観るのも大好き。プロ野球も楽しみです。」
Y「ピッツバーグの街については?」
M「アメリカで1番住みやすい都市。昔は鉄鋼の町で公害がひどかったが――最近はハイテク産業が盛んですよ。空気もいいし、このペンシルベニア州は自然の大変美しい土地なんです」
Y「このオケを指揮する時のポイントは?」
M「どんなオケも、指揮者とオケの関係は“パートナー”そこから音楽が生まれる。パートナーシップとは、オケが何をどれくらい出来るかが大切。もう大分このオケがよく分ってきて、一緒に演奏するのが楽しみになってきました。私はオケの能力を解剖し、指示を与える。それに(全くたがわないように)答えてくれる――そういう演奏が出来ているんです。」
Y「音楽的キャッチボールですネ!?」
M「イエス!」
♬
ここでヨッサンは大阪弁に早変わり!!
Y「“マゼールはん!”アメリカでマゼールさんをこういう感じで呼ぶ人って、いてはりますか?!たとえば“ロリー”とか…。」
M「普通、ファーストネームで呼びますネ。ただ、ピッツバーグのオケには、私が昔(ヴァイオリン奏者として)在籍していた時のメンバーが13人も残っていて、彼等は“ロリン”と呼ぶことがありますネ。」
Y「今度おうた時には“ロリン”と呼ばせて下さい」
M「勿論、どうぞ。でも貴方のファーストネームを知ってなきゃいけません」
Y「とも」
M「とも?」
Y「(ちゃうヮ)ヨッサン!」
M「ヨッサン?」(笑い)
Y「ほんで、これを聞いとかんとアカンな。指揮する楽しさちゅうか喜びってなんですか?」
M「私の楽しみは聴いている人に喜びを与えることです。私は音楽を作った(作曲した)人間ではなく、仲介者なんです。そういう者がいなければ、聴く人に喜びを与えられない…聴いてくれる人、誰かが感動してくれれば…それが私の喜びです」
Y「マエストロは考えたら何でも指揮しはりますけど、苦手や!という作曲家はいてはりませんか?!」
M「ありません!!徹底的に一人一人の作曲家の勉強をしてきましたから。その作曲家を完璧に掴むことが出来るまでやることが、解釈者、仲介者の使命。私が誇りに思っているのは“どこにも専門がないことを専門にしている”んです」
♬Y「それにしても記憶力がよろしいなァ!?(リハーサルから本番まで楽譜を見ないで指揮する!驚異の記憶力!!」
M「音楽を勉強する時に、3つの要素があって、①視覚的なポイント②耳のよさ(グッド・イヤー・メモリー)③見たもの聴いたものを分析する能力…が必要で、一つ一つの音楽にきっちり反応して蓄積され残っているんです」
Y「でも、パッと忘れたりしませんか??!」
M「何でも覚えてますね。3つの器官、目か耳か頭で分析する能力を働かせているので…」
Y「ほんなら、日常生活でも物忘れはないんですか!?メガネを忘れるとか…。」
M「オ~、イエス。いままで、よくメガネをどこかに忘れてきたり…」
Y「安心しましたワ!!?」(笑い)(よしかわ・ともあき FM大阪くらこれ企画プロデューサー)
ピッツバーグ交響楽団を指揮するマゼール!(CDジャケットより)