なにわのヨッサン とっておきの【音楽交遊録】・・・・吉川智明(013)
美人ヴァイオリン奏者の千住真理子さん。今年はデビュー35 周年。“目が回る”ほどの大忙し。なんと言っても2002年に幻の名器ストラディバリウス“デュランティ”を入手してからの彼女の演奏家人生が満開・全開状態になったのです。購入価格: 〇億円也。(目が飛び出たァ~‼)ではお金の出所は⁉
その前に名器ストラディバリウスについて千住先生にレクチャーしていただきましょうか‼
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「イタリアの北、クレモナという小さな村があるんですネ。その地方の人、皆がヴァイオリン、ヴィオラ、チェロといった弦楽器を作っている…それを聞いただけでもお伽噺のような素敵なお話でしょ。400年前から今にいたるまで、そんな中で一番有名なのが“ストラディヴァリ”という方。1644年に生まれ、93 歳で亡くなる前までヴァイオリンを作り続けていたんです。200以上のヴァイオリンを作ったけど、現存する値打ちのあるヴァイオリンは数えるほどしかない。そのうちの1つが1716年に制作された“デュランティ”なんです。」
な、なんだか千住先生の講義に吸い込まれていくような…目から鱗が落ちるような。
人生流転といいますが…名器ストラも天災(地震、火事…)、昔は船の事故、飛行機事故、それに戦争被害で壊れたり。だから今残されているのはごく僅か…故にお値打ち品…ということは最高値がつくわけであります。
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千住先生は続けます。
「デュランティ。この楽器の最初の所有者は、な、何とローマ法王なんです。2 人目が“デュランティ家”(あ、そうなんや…)。その貴族のお城にず~とこの楽器は眠っていたんです。この200年の間、デュランティ家は“この楽器を持ってますヨ~”って言わなかったので、“あのローマ法王が持ってたあのストラはいったいどこへ?”と大騒ぎ。いつしか“幻のヴァイオリン”と呼ばれていました。で、フランス革命の寸前にこの名器は逃れるようにスイスの当時栄えていた貴族のもとに渡され約80 年。今回200 2年に我が千住家にやって来ました」…なるほどなるほど。ならばどうして千住家に?
「まず、電話がかかってきて、“ストラを見せたいんだけど、見る気はないか?!!”と言われて、正直、苦労したくないなあ(金銭面で)と思ったんで、お断りしたんですよ。“忙しいし、そちらに行けないから残念です”と言ったら…“忙しいのであれば、こちらからお持ちしましょう‼
条件は①1ヶ月以内に満額そろえて支払う②演奏家としてプロとしてやっていく”(そうか…何億というお金なら演奏家でない人は沢山いる。ならば競売で値が吊り上る。(腹の探り合いで)そうするとこの名器は音を出すことはない。つまりヴァイオリニストの手に渡らない… なんという不幸)
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見るまでは腰が引けて…た・ん・で・す・が…この名器をパッと弾いた時に“これは誰にも渡したくない!絶対渡したくない‼どうしたらいいだろう? これ持って逃げたい”と思いましたネ。兎に角欲しい‼(腹を決めて)
それから各金融機関に頭を下げ回りました…が、ダメなんですネ。そんな高額なものは貸せない“返せるメドはあるんですか?” と逆に聞かれて…演奏家って、自由業ですからせいぜい1年半くらいのことしかわからない…(腹をえぐる断念の文字がチラチラ)…
ある銀行のヒトが“ウチなら貸せます”と、もう涙が出ました。“その代わり兄達2人を人間担保として(博さん: 日本画家、明さん: 作曲家)2人を預からせていただきます‼”兄達は捕虜みたいになりまして、そのお陰で貸していただく事が出来ました」… “太っ腹‼” なお話でした。(よしかわ・ともあき FM大阪くらこれ企画プロデューサー)
ザ・シンフォニーホールの楽屋で、ヨッサンがプレゼントした、551蓬莱の豚まん巾着「きんちゃくん」を手に千住真理子さん