094 羽ばたき続ける“神童”指揮者 ロリン・マゼール①

なにわのヨッサン とっておきの【音楽交遊録】・・・・吉川智明(094

天才と何とかは紙一重。天才も20歳を過ぎれば只の人とも言われています。何年ぐらい前だったか“吉川さん!凄すぎる天才ピアニストがデビューしまんねん!!(大阪弁だと、ちと信憑性に欠ける)これが新譜、これがコンサートチラシです!!”

その天才が目の前にやって来た…ズー体のデカイ少年や!手をあわせたらヨッサンの倍以上もある。その名はディミトリス・スグロス…ギリシャ生まれ、神童を欲しいままにし、10歳でギリシャ音楽院の(皆さんええかな)教授に就任…10歳で。14歳で東芝EMⅠからデビュー。45曲のピアノコンチェルトをレパートリーにしていた。…が、あれから30余年、彼の名前はほとんどスグ消えていった。(どうも手が大きすぎて指が空回りしたのとちゃうか…とヨッサン)

ヨッサンの大好きな“いぶし銀”のような役者、小沢昭一さんが、かつてこんなことを語ってくれましたっけ…

「人間っていうのは人生3回チャンスがある。まず、第1期は若さで羽ばたく時。次は、いろいろ分ってきた30代後半(人によっては40代)。第1期でパッと羽ばたけたからと言って第2期で飛べるか分らない。大体落ちる方が多い(上記、スグロスも…)そして第1期で羽ばたけなかった人でも第2期で出てくる人もいる。これは力のある奴ですョ。これと勝負して、さあ、第3期はというと、どうなるか分らない。僕は(当時小沢さん50歳)今、第2期がそろそろ落ち目かなぁ…、で、さぁ3期が来るぞって時ですョ。どう3期を迎えたらいいかというとこれは難しい。どうやったら自分の人生の後半まで羽ばたき通せるかってことを考えると(役者って)そう楽しいとは言えなくなってきますネ!!」

この含蓄あるメッセージはまさに名旋律のようにヨッサンの中で息づいています…。

さて、クラシック演奏家の中で、“第1期も第2期も第3期も…否、80歳を過ぎても羽ばたき続けている神童”指揮者がいるんです。

その名はロリン・マゼール(まもなく82歳)なんせ、8歳であのニューヨークフィルを指揮デビュー!!9歳でフィラデルフィア管弦楽団を、11歳で20世紀最高の指揮者の1人トスカニーニに認められNBC交響楽団を指揮したんですから!!ホンマかいな?!です。

で、そんなマゼールさんとお会いしたのは丁度25年前、彼が生まれ育ったアメリカの名門ピッツバーグ交響楽団を率いてやって来た時のこと。FM大阪では大阪国際フェスティバルを飾るこのオケの模様をデジタルライブ収録することになったので、プロデューサーのヨッサンは特別番組用のインタビューと深夜の(大阪弁による)クラシック番組用のインタビューを収録したい旨を大阪国際フェスティバル協会のNさんに打診しました。…ら、逆さづりにでもなったような発言が…

“吉川さん、インタビューになりませんで、気難しいオッサンでっせ!!”

こりゃNさん特有の大袈裟なハッタリかと思ったけど、そうでもなさそう…マゼールの風貌は神経質でお疲れさんのあの目の下のクマ、鋭い眼光、ニヒルな口元…完璧無比なバトンテクニックと超人的記憶力を駆使したオーケストラコントロール。ジュワ~っと迫るインタビューへのプレッシャーが迫り来る。相手は50を過ぎても現役天才のマエストロや!!

果たして…こんなにも紳士的で、こんなにもユーモアがあり、こんなにも気さくにインタビューに応じてくれるとは!!リーガロイヤルホテルのティーサロンでのあれこれは、これまで抱いていたマエストロのイメージを払拭。あたかも(ティーサロンの)目の前の滝の流れにも似て、目からウロコが心地よく落ちていくようでした…。(数時間後のNさん…“吉川さん、えらいたのしそうでしたナア”)。次回は対談満載!!(よしかわ・ともあき FM大阪くらこれ企画プロデューサー)

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目の下のクマが印象的!?なロリン・マゼール(CD「シベリウス 交響曲全集」ジャケットより)

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